さて、その紙切れは1枚だけ、表面だけの印刷で(裏面は白紙)、表の下三分の一が委任状となっていた。
はてさて、ボクの知る常識では、総会の案内は一枚ペラでも構わないかもしれないが、委任状は総会資料と一緒に送ってくるのが常識だと思っている。上場会社の株式を持っている人ならわかると思うが、株主総会前には、総会資料と書面票決葉書(兼)委任葉書みたいなのが送られてくる。
総会資料の冊子には、社長の挨拶やら、今年度の業績の推移やらが書いてあり、審議事項の会計報告も公認会計士が作っているのだろう、企業会計報告様式に則って、細かい数字が所狭しと並んで知るし、各項目が丁寧に説明されている。
アカウンタビリティーの語源だと思われる”account”という単語は、会計や計算書という意味があって、会計報告をするには1円単位までの領収書とそれらが何故必要だったか、どのような目的の金銭であったかによって計上される勘定科目が変わってくるかもしれないし、詳しい説明をしないといけませんねということから、アカウンタビリティーというのは説明責任と訳されるようになった(とボクは思っている)。
◆子どもが持ち帰ったPTA総会の案内を見てみると、総会の日時場所、議案名が示してある。
日時 : ○月○日、○時○分より(平日の昼間)
場所 : ○○小学校講堂
議題 : 昨年度の活動報告について
昨年度の決算報告について
新年度の活動計画について
新年度の予算について
議題/議案名は一言一句正確ではないが、この4行が書いてあった。
◆「総会に出席できない人は委任状を提出してください。」との案内文があり、
その委任状はというと、一言一句正確ではないが、こんな感じだ。
「総会の議決権一切を総会の議長に委任します。総会の議決には従います。」
「年月日、子どもの氏名、保護者の氏名・印」
◆誰も問題を感じなかったのだろうか?
問題なのは、紙切れ一枚だけだということ。
◆念のため、書いておくが、どこかのボランティア団体のように、「議案内容はweb上で公開しています。ご自身でダウンロードしてください」 なんてことはない。全くの紙切れ一枚だけだ。
総会の議案の内容が何も示されていないのに、どうして自分の投票する権利(議決権)を委任できるんだろうか?それは、議決権の放棄という意味か。
組織側も、何も資料を示さず、委任状を配るとは、どんな神経をしているのか疑わしい。
これでは、目をつぶって白紙委任してくれ、というのと同じだ。平日の昼間にPTA総会に出席するなんてのは、PTAの役員と学級委員とそのお友達数人程度しかいない。(だろう、たぶん)
ボクが知る一般的な強制・自動加入のPTAの総会なんぞは、委任状で成立、定足数を確認した途端に、議決する必要もないほど委任状があって、しゃんしゃん総会は決定しているというものだ。
だからといって、事前に総会資料を示さないで委任状を配るというのは、ブラマヨを連れてきて欲しいくらいだ 「どうかしてるぜ!」
平日の昼間に参加できない保護者も多くいるのだから、議案内容は文書でしか判断できない。だからこそ、組織側は甘えず、襟を正す意味でも、総会資料を事前に配布し、重箱の隅をつつかれても説明できるだけの資料を、細大漏らさず報告書や計画書にまとめて会員に事前に提示する義務があると思う。もちろん、組織側は最後の1円まで詳細に報告する義務がある。
その資料に添付して「会員は書面票決をすることができます。また、委任することも可能です。」とでも書いて、
- 第1号議案 活動報告(案)の件 賛成-反対
- 第2号議案 決算報告(案)の件 賛成-反対
- 第3号議案 活動計画(案)の件 賛成-反対
- 第4号議案 収支予算(案)の件 賛成-反対
総会の議決権を( )に委任します。
年月日 子どもの名前 保護者の名前
というふうにするのが当たり前だと思う。(新入学児童の保護者は昨年度のことについて票決したり委任したりすることができるのだろうか。組織の内規的に可能としている場合でも、実際は昨年度の活動や予算がどのように使われたのか、学校に兄や姉がいなかった新入学児童の保護者にはよほど情報通でないとわかりっこない。)
入会時の説明はしない。しかも、入学を以て全員、強制・自動入会としていると、人間というか会員の権利を軽視する傾向になるのだろうか。
学級委員の選出では、平日の昼間に出席するか委任するかの二択しか認めず、出席してプライバシーを暴露しないと役に当たる可能性があると、脅しのような文句まで使っていたり、今度は、総会資料を明示せず、出席するか白紙委任するかしか選択肢を与えない。
これでは、社会教育関係団体などの、まともな団体という定義を遙かに下回っているとしか考えられない。
もはや、金さえ引き落とせれば、あとは自由にやらせて貰いまっせ集団だ。
こんな総会案内しか出来ない団体は、他人様のお金を集めるべきではない。杜撰としかいいようのない総会しか開けないのだから。
まぁ、事前の指摘にもかかわらず、入退会自由を隠蔽し、「入会申込書をとらず」、文書による説明は「不実の告知」だとか「不利益事実の不告知」という指摘が入ることを恐れてだろうか、口頭での説明で逃れようとしているような団体だ。それはそれで、「不作為の作為」という立派な?役員たるものの義務違反だとは分かってないだろうし、こんな総会案内しかできないのも無理はない。最初から隠蔽だから、総会の内容も隠蔽したいのだろうか、と疑ってしまうのはボクだけだろうか。
アカウンタビリティーについては、既に述べた。
では、コンプライアンスという観点からはというと、「社内規程・マニュアル・倫理・、どういうルールを設定して行くか・どのように運用して行くかを考え、その環境の整備までを含んでいる」が、総会のルールが全く欠如しているか、社会常識から逸脱しているのが、自校のPTAだとしか分析できない。
追記:(2013/05/17)-*-*-*-*-*-
このような総会案内・委任状の運用方法を残して来たのは、それまでの役員(学校管理職を含む)や会員であると思う。毎年新任の役員が前例を踏襲するのが精一杯だということも一定程度は理解できる。じゃぁ、いつ改善されるの?と思うと、前例追認、前例踏襲を続ける限り、いつまで経っても何も改善されない。
一方、時代はますます女性の社会進出がすすみ、ライフスタイルの多様化が進み、自ら希望してPTAに時間を割きたいと願う人は少なくなっているだろうし、こんな運営ばかり続けているPTAなら、尚更、やりたくないと思うのではないだろうか。
個人の自由意志を尊重する、個人の権利を尊重する(侵害しない)など、改善する方向に舵を切らなければ、ますます組織的な締め付けや強制の度合いを強くしていかないと組織が運営できない・・・と、より反社会的な団体になっていくような懸念を抱く。
同日(2013/05/17)追記:-*-*-*-*-*-
PTAは準拠法をもたないので各単位PTAによって運営が異なることがあり、疑問を呈する自校PTAの総会案内などとなる。では、準拠法がある場合はどのようになり、一般社会常識や公序良俗を形成するのはどのようなパーツがあるのか、その一端なりとも調べてみた。
●NPO法(特定非営利活動促進法)関係
会員に総会の通知を送るのですが、どのような事項を知らせなくてはならないのですか。(出典 http://www.npoweb.jp/modules/faq/index.php?content_id=42より抜粋)
最低限、日時や場所、議事の内容について正確に通知することが必要です。その他、委任や書面表決ができるよう定款に書いてある場合は、総会のお知らせ文や議案書などの資料とともに、出欠欄、委任状、または書面表決の欄をもうけた返信用紙(ハガキ)を送ることが一般的です。具体的には、欠席の場合には、誰に委任するか(出席する他の社員や議長)、また書面表決する場合は、議案の番号の横に賛成・反対の印をつけることによって表決するというものです。
NPO法では、定款変更、合併、解散については総会で決議すると定めていますが、その他については、それぞれの団体の定款で定めることになっています。また、NPO法30条では、民法第60条から第66条までの規定をNPO法人の管理について準用する、と定めてあります。
民法第62条には、総会の招集は少なくとも5日前にその会議の目的たる事項を示して行うこと、また第64条には、あらかじめ通知をした事項についてのみ総会で決議できる、とあります。
●一般社団・財団法人法 より(適宜、略す)
(社員総会の招集の決定)
第三十八条 理事(略)は、社員総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 社員総会の日時及び場所
二 社員総会の目的である事項があるときは、当該事項
三 社員総会に出席しない社員が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四 社員総会に出席しない社員が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五 以下略
(社員総会の招集の通知)
第三十九条 社員総会を招集するには、理事は、社員総会の日の一週間(略)前までに、社員に対してその通知を発しなければならない。ただし、前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合には、社員総会の日の二週間前までにその通知を発しなければならない。
2 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。
一 前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合
二 一般社団法人が理事会設置一般社団法人である場合
3 理事は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、社員の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該理事は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
4 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
(招集手続の省略)
第四十条 前条の規定にかかわらず、社員総会は、社員の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。ただし、第三十八条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない。
(社員総会参考書類及び議決権行使書面の交付等)
第四十一条 理事は、第三十八条第一項第三号に掲げる事項を定めた場合には、第三十九条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、社員に対し、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(以下この款において「社員総会参考書類」という。)及び社員が議決権を行使するための書面(以下この款において「議決権行使書面」という。)を交付しなければならない。
2 理事は、第三十九条第三項の承諾をした社員に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による社員総会参考書類及び議決権行使書面の交付に代えて、これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、社員の請求があったときは、これらの書類を当該社員に交付しなければならない。
第四十二条 理事は、第三十八条第一項第四号に掲げる事項を定めた場合には、第三十九条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、社員に対し、社員総会参考書類を交付しなければならない。
2 理事は、第三十九条第三項の承諾をした社員に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による社員総会参考書類の交付に代えて、当該社員総会参考書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、社員の請求があったときは、社員総会参考書類を当該社員に交付しなければならない。
3 理事は、第一項に規定する場合には、第三十九条第三項の承諾をした社員に対する同項の電磁的方法による通知に際して、法務省令で定めるところにより、社員に対し、議決権行使書面に記載すべき事項を当該電磁的方法により提供しなければならない。
4 理事は、第一項に規定する場合において、第三十九条第三項の承諾をしていない社員から社員総会の日の一週間前までに議決権行使書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供の請求があったときは、法務省令で定めるところにより、直ちに、当該社員に対し、当該事項を電磁的方法により提供しなければならない。
●会社法第四百三十七条(計算書類等の株主への提供)より抜粋
取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前条第三項の承認を受けた計算書類及び事業報告(同条第一項又は第二項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。)を提供しなければならない。【会社法施行規則第116条、同117条、同133条】
0 件のコメント:
コメントを投稿